逗子市を中心に湘南エリアで不動産売買の仲介を行っている、TERASSの小林と申します。逗子市空家アドバイザーとしても活動しています。私はこれまで20年以上、不動産業界に携わってきました。家の売り買いは、多くの方にとって一生に一度あるかないかの大きな出来事です。だからこそ不安を少しでも減らし、安心して進めていただけるお手伝いができればと考えています。
家じまいとは
近年、「終活」という言葉が広く知られるようになりました。終活というと、遺言や相続、葬儀やお墓の話題が中心になりがちですが、実は非常に重要でありながら見落とされやすいテーマがあります。それが「家じまい」です。
家じまいとは、単に家を処分することではありません。住まなくなった家について、今後どうしていくのかを整理し、売却・活用・解体などの選択肢を検討・判断する一連のプロセスを指します。これはまさに住まいの終活とも言えるものであり、空き家問題とも深く関係しています。

先延ばししてしまう心理
多くの方が家じまいを先延ばしにしてしまう背景には、共通した心理があります。「まだ住める」「いつか誰かが戻るかもしれない」「家を手放すのは忍びない」。こうした感情は決して特別なものではなく、誰もが自然に抱く思いです。
特に多いのが「かもしれない」という感覚です。例えば、「施設に入居した親が元気になって戻るかもしれない」「親戚の誰かが住むかもしれない」といったケースです。しかし現実には、その“かもしれない未来”が訪れないまま、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
問題は、家を維持するには確実にコストが発生するという点です。固定資産税、定期的な管理、庭木の手入れ、建物の劣化対策。誰も住んでいない家であっても、支出は続きます。さらに建物は年々老朽化し、資産価値は下がっていきます。

空き家の負担
空き家がもたらす影響は、経済的負担だけではありません。景観の悪化、防犯面の不安、さらには近隣トラブルの原因にもなり得ます。伸び放題の庭木、越境した枝、不法投棄されたごみ。所有者に悪意がなくても、周囲との関係に影を落とす可能性があります。
見落とされがちですが、精神的な負担も非常に大きな問題です。ポストに溜まるチラシの処理、台風や大雨の後の状況確認、突発的な修繕対応。離れた場所に空き家を持つ方ほど、このストレスを実感されています。「もっと早く動けばよかった」という声が多いのは、こうした日常的な負担が積み重なるためです。
では、家じまいはいつ考えるべきなのでしょうか。重要なのは「問題が顕在化してから」ではなく、「まだ余裕がある段階」で話し合うことです。特に親世代が元気なうちに意思を確認し、家の将来について共有しておくことは極めて重要です。

実際の事例として、あるご家庭では、お母様が施設へ入居された後も「戻るかもしれない」という理由で家を維持し続けました。しかし結局戻られることはなく、7年間空き家のままとなりました。その間の固定資産税や維持費は大きな負担となり、結果的に早期売却の選択肢も難しくなってしまいました。
押さえたいポイント
家じまいを進める上では、不動産業者選びも重要なポイントです。特に相続案件の経験が豊富で、司法書士や税理士など各分野の専門家と連携できる業者は大きな安心材料になります。問題が複雑化しやすい家じまいでは、ワンストップで相談できる体制が大きな価値を持ちます。
また、地域密着型の業者の存在も見逃せません。エリア特性や市場感覚だけでなく、地域独自の事情や背景を理解していることが多く、柔軟で現実的な提案が期待できます。
加えて注意したいのが、立地に関するリスクです。例えば、土砂災害警戒区域などに指定されている物件は、売却時に特有の課題が生じることがあります。こうした要素は専門的な知識が必要となるため、早めの確認が重要です。
費用面についても現実的な理解が欠かせません。売却には仲介手数料や残置物撤去費用などが発生し、一般的に物件価格の数%程度の諸経費が見込まれます。想定外の出費を防ぐためにも、事前の把握が大切です。
そして家じまいにおいて、意外な盲点となるのが「境界」です。不動産取引では建物より土地の扱いが重要視されます。境界杭が不明確なだけで、手続きが止まってしまうこともあります。特に築年数の古い住宅では境界が曖昧なケースも多く、測量や確定に時間と費用が必要になる場合があります。

最後に
家じまいは決して後ろ向きな行為ではありません。家族の将来、資産の整理、負担の軽減を考える前向きな選択です。大切なのは「いつか」ではなく「今」、少しだけ意識を向けてみることかもしれません。
まずはご自宅やご実家の状況を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
一般社団法人かながわ終活サポートセンターは各分野で活動する地域密着の専門家たちが集まり、終活にまつわる情報を発信しています。気になるテーマや知りたいことなどありましたら、お気軽にお問い合わせください。講演会や個別相談会も随時行っておりますので、ご自身の終活に役立てていただけたらと存じます。