近年、住環境の変化や宗教観の変化などから、仏壇を置かない家庭も増えてきました。しかし、大切な家族やお世話になった人に手を合わせて祈る心はどなたもお持ちだと思います。この記事では当初、「仏壇はいらない」と考えていた方が「やはり手を合わせる場所が欲しい」と自分なりの祈りの場を作ったケースをご紹介します。
自然と溢れた手を合わせたいという気持ち
「やっぱり手を合わせる場所が欲しくなって」
カトウ様が来店された際、最初に言われた言葉です。お話を聞くと旦那様を亡くされた後、仏壇や位牌は用意せずに3ヶ月ほど経った時期でした。故人様の生前のご希望もあり、葬儀はシンプルな家族葬、お墓は樹木葬にしたそうです。「二人とも菩提寺がないので」と戒名もつけず、いわゆる無宗教の形でお見送りとご供養をされていました。
納骨後はお写真を飾り、お花をたむけていたというカトウ様。ただ次第に「もう少ししっかりとした形で手を合わせたい」と思うようになったと言います。最近の仏壇はコンパクトなものが主流ですが、マンション住まいなこともあり置く場所がありません。そこで、敷板を使ったご供養セットをご提案しました。

また、ネコを飼っているため仏壇周りの「火」についても心配していました。伝統的な仏壇には五具足あるいは六具足がセットで設置されます。これは香炉や花立、ロウソク立て、ご飯をお供えする仏飯器などです。ロウソクや線香は火が心配ですし、毎日ご飯を炊いてお供えできるかと言われると、なかなか難しい方が多いのではないでしょうか。
「せっかく揃えても使わないのではもったいないし、モヤモヤすることもある。できる範囲で無理なく続けられる形がよろしいかと思います」とお伝えすると、安心された様子で選ばれました。
故人様を思って選ぶ
最終的には国産杉を使った敷板に俗名(生前のお名前)で作成した位牌、「常花」と呼ばれる金属でできたお花、そして「おりんは毎日鳴らすから良いやつを」と岐阜県高岡産の高級おりんを選ばれ、シンプルながら住環境に馴染み、想いの詰まった祈りの場が完成しました。箱型ではないため、圧迫感や強い存在感はなく、「リビングに置いても主張しすぎることはない。でも主人を身近に感じられる」と嬉しいお言葉を頂戴しました。

少し前の時代まで、葬儀やご供養の方法は「こうあるべき」という型があり、それに則ってやることがご供養であり、残されたご家族の心の拠り所にもなっていたと思います。しかし現代の価値観は多様化しており、何が良いか、正しいかというのを一概に言うことは出来ません。ただ、ご本人の思いを形にするのが、令和の時代の仏具店が提供できるものだと考えています。
心の拠り所をご自身で
仏具店で日々相談を受けている中で感じるのは、皆さん「仏壇はこうしなければいけない」というイメージが強く、「それは無理だから置くのはやめておこう」となる方が多いということです。しかし、今ではデザイン性が高く、素材や製法にこだわった仏具がたくさんあります。「お父さんは海が大好きだったから」と、青色を基調に位牌やおりんを揃えた方もいらっしゃいました。このようにそれぞれを組み合わせてご自身で世界に一つだけの、心のこもった祈りの場を作ることで、故人様とのつながりを感じたり心の拠り所になるものと考えています。
「仏壇仏具にも様々な選択肢がある」と言うことをより多くの方に知っていただきたいと考えています。これからも具体的なケースをもとに執筆していきますので、お読みいただけたらと存じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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